今回はH氏のST205のフロントハブを修理します。
2,3週間前にサーキットに行ってから、時折回転に合わせてゴツゴツといった音が鳴るという事で、その症状からハブベアリングがダメになったものと推定し、ハブベアリングを用意して修理に臨みました。
左側の異音が出ていた方は、ハブボルトを外したところ、ハブが抜けてしまいました。
なんと、ハブが割れており、先端の3cm程度の部分で駆動力が伝達されているような状態でした。ドライブシャフトのスプラインが損傷していなかったのは不幸中の幸いだったと思います。
写真が破損したハブです。よく見るとハブにグラインダーでー削ったような傷がありますが、この謎は後ほど明らかになります。
仕方がないので、その日の作業は中断です。ハブを購入して臨むことになります。新品は美しいですね。思わず撮影w
ST205はスーパーストラットという構造のサスペンションを採用しており、いささかナックルを外すのが面倒です。
画像のように、3本のボルトとアッパージョイントのテーパー部を抜くのが最も簡単なようです。アッパージョイントの勘合を外すにはタイロットエンドプーラーを使用します。ただし、テーパーシャフトがタイロッドのそれよりも太いため、プーラーの先端を削ってうまく入るようにしました。太い分よほど堅いかと思いましたが、案外簡単に外れます。
ナックルを外したら、ABSセンサーのダストカバーを外した後、圧入されているハブを抜きます。これには5,6t程度の力を掛ける必要があるので、油圧プレスが必要でしょう。ギアプーラーで抜くのはちょっと難しいと思います。
ブレーキディスクのバックプレートが邪魔ですが、写真のような感じで、適当な当てものをして水平になるように置いて、プレスでハブを押し込みます。
ハブを抜くとナックル側には、ベアリングのアウターレース、スナップリング、ダストシール(in/out)が残るので、ここで述べたのと逆順に外していきます。
スナップリングを外すのは、大きめのプライヤーなどを使わないとやりにくいです。
ベアリングは圧入されていますので、スナップリングを外した後に裏側から押し込みます。もう古いベアリングは使わないので、ベアリングを組んだ状態でインナーレースを押せばよいでしょう。圧入の時は抜き取ったアウターレースが使えます。
ハブの内面に傷が付いていると、挿入時に不都合が生じる可能性があるので確認しておきましょう。もし傷が付いている場合は、#400位のサンドペーパーで突起を落としておきます。
ここで、構造について説明しておきましょう。断面図は左記のようになっています。インナーレースが2分割になっているので、抜き取ったハブのほうにインナーレースが半分残ります。
次はこの残ったインナーレスを引き抜きます。
爪がかかる余裕はあるのですが、2,3t程度の力を掛けないと抜けてきません。しっかりしたギアプーラーを使えば抜けるかと思いますが、持っていない場合は今回の作業の山場となります。私も大きなものは持っておらず、ダメ元でこういうセパレートタイプのものを使ったら工具のほうが壊れました。別に固着していたという訳でも無かったので、同程度のものならトライせず、別の方法を検討することをお勧めします。
仕方がないので、パイプの先を塞いだものをインナーレースに溶接して、反対側から棒で押し込んで外すことにしました。溶接機さえあれば使える方法です。
全周にわたってガチガチに溶接していますが、工具を壊してイライラしていたせいで、おそらく数か所点づけすれば十分です。
(写真で使っているドライブシャフトは、この車両のものではなく、こういった用途のために取っておいた不要なドライブシャフトです。)
右側のインナーレースを抜き取ってみたところ、とんでもないことが判明しました。
どうやら、インナーレースを外すためにディスクグラインダーで切断したらしいのですが、その際にハブ側も削ってしまっています。まあ、切断するのは一つの方法だとは思うのですが、もう少し用心深く出来なかったのかなぁ。あまつさえそのまま組んでしまうとは・・・
ああ、もちろん、これはH氏がやったわけではなくて、過去のオーナーがやったようです。本人のコメント: